古典力学では、粒子の運動を決定する運動方程式 (いわゆるニュートンの
運動方程式) の中に,「加速度」や「速度」といった量が入っているため、
これらの概念は、極めて重要である。
しかし、量子力学の世界では、
の
時間変化という形で表され、運動方程式にも、速度や加速度といった概念は、
現れてこない。
むろん、これらの量を定義したり、測定したりすることはできるが、あまり
重要な量ではない。
これに対し、量子力学の世界で重要な役割を果たしているのは、
「運動量(momentum)」である。
閉じた力学系 (外とかかわりを持たない系) では、運動量は、エネルギーと
同じように、保存量であるし、なによりも、量子力学的波動の波数と、強い
関係がある。
すでに、我々はド・ブロイの関係(DeBroglie relation)より、
方向に運動量
を
持つ電子が、波数
で変化する確率振幅、つまり
の形の確率振幅を持つことを知っている。
前節の結果を利用して、このことをもう少し正確に表現してみよう。
前節と同様に、全長
を
等分し、
ごとの小区間に
分割して考える。
すると,「運動量
の状態」の電子が,「場所
にいる状態」をとる
確率振幅
は、次式で与えられる。
正規化定数
は、正規化条件
より決定でき、
位相項を無視すると
となる。
問題5..3 式 5.21 の比例係数が、
で与えられることを
示せ。
ヒント
答え
。
これが 1 でなければならないから、
となる。

ヒント
初項
、終項
、
公比
の
項からなる等比級数。
問題5..5 整数
の関数、
は
を
の
整数倍増減させても、元と同じ関数となることを示せ。
答え
の値を変えていくことより作られる、いくつかの
運動量確定状態(momentum defined state)
のうち、適当なものを選択すると、
とは別の基底状態の組を作ることが、
可能となりそうである。
まず、直交性を検討してみよう。
では、この値は
、つまり、1 となる。
では (ただし
としておこう)、問5.4の結果より次の式が得られる。
ただし、
とした。
したがって、
が
の整数倍であると、この
結果は 0 となり、正規直交性を成立させることができる。
以上のことから、
として、次のような飛び飛びの値をとって、
個の
状態を用意すれば、基底状態を組めそうである。
| (5.22) |
を
に限ったのは、問題5.5
より、この範囲を越える
を用いても、同じ関数に
帰着してしまうからである。
上式で得られた範囲を満たす
個の
に対応する運動量を
図5.3に示す。
図より、
、
であるから、先に用いた
の条件は、自動的に満たされている。
これら
個の状態
の組は、完備性も備えていることが、
証明できる。
このように、次の
は基底状態を組むことがわかる。
| (5.24) |
つまり、勝手な状態
を表現するのに、
で表現しても、
で表現してもよいことを
示している。
なお、
の間隔は
で与えられ、実空間の
大きさが大きいほど、小さくなる。
一方、運動量空間の大きさは
で与えられ、
実空間の区間間隔が小さいほど大きくなっている。
問題5..6 式5.23を証明せよ。
ヒント
に対し、
問5.6の
、
とした式を用いてみよ。
答え

問題5..7
が、すべての
に対してわかっているとして、
を求めよ。
また逆に、
の組から、
の値を求めよ。
答え

ここに示した状態が前節に示した運動量確定状態と同じものであることは容易に 理解できよう。
問題5..8
が、次のように与えられている
(図5.4参照)。
これらの確率振幅の二乗を図から想像し、かつ計算により、
正規化されていることを確かめよ。
それぞれの
を求め、さらに図示してみよ。
それらの確率振幅の二乗を図から想像し、かつ正規化されていることを
確かめよ。
答え (図5.5参照)
問題5.6の中で出てきた
の式は、
と
の間が
以上開いていても、次のように
を周期としてきちんと
定義できる。
こうした周期的な
関数は、これから本章以降でもしばしば
現れるので
という記号で定義しておこう。
| (5.25) |
mod とは割算の余りのことなので、
が
で割り切れる、つまり、
と
の間が
の整数倍であるときにのみ、1 になることを
示している。