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: 自由粒子のシュレディンガー方程式 : シュレディンガー方程式 : 電子の位置基底状態と運動量基底状態   目次   索引

不確定性原理

$\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle $ から $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ を求める 変換を、フーリエ変換(Fourier transformation)、逆を、フーリエ逆変換(Fourier inverse transformation)と言う。 一口で言うと、 $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ は、 $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle $ の 中にどのくらい周期的な部分があるか、を示す指標となっている。 例えば、図5.4 (a)では、$x_j$ の変域にちょうど 一波入っているので、 $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ には $J=\pm1$ に成分が 現れている。 また(b)の場合は、三つの波があり、かつ平均値が 0 でないので、$J=\pm3$$J=0$ に成分が現れる。 (b)から(c) のように $x$ 軸上でゆらぎの原点がずれると、 $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ の成分の位相がずれる。 しかし、その確率には影響しないことがわかる。 $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle $ が急激に変化すると、短い波長、つまり波数の 大きな成分が増える。 例えば、(d)のように、原点にだけ局在するような $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle $ に対しては、あらゆる $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ 成分が存在する。 (e)、(f)と、存在確率のある領域が増えていくと、 $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $ は一箇所にかたまる傾向が出てくる。

このように、$x$ 空間での散らばり具合と、$p$ 空間での散らばり 具合には、逆の相関がありそうである。 観察で、この関係を求めてみよう。 (d)、(e)、(f)で、$x$ の拡がり具合はそれぞれ $\Delta x$$3\Delta
x$$5\Delta x$ であるのに対し、$p$ の拡がり具合は $9\Delta
p$$3\Delta p$$2\Delta p$ 程度であるから、 $(xの拡がり)
\times(p の拡がり)=n\Delta x\Delta p=2\pi\hbar$ が、ほぼ 成立する。 (a)、(b)、(c)を見ると、この積はもっと大きくなるようであり、一般に $(xの
拡がり)\times(kの拡がり)>2\pi\hbar$ の関係が成立しそうである。

この関係は、実は、量子力学にかかわらず、フーリエ変換で結ばれるあらゆる 二つの変数の間に、厳密に成立する関係であるが、これを、量子力学の世界の 用語で表してみよう。 ある状態の電子の位置を観測すると、$x_2$ と観測されたり、また改めて同じ 状態を観測すると、$x_{-3}$ と観測されたりして、観測結果にはバラつきが 生じる。 $x_i$ を観測する確率が、 $\vert\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle \vert^2$ で 与えられることから、 $\left\langle\left.x_j\right\vert\psi\right\rangle $$x$ の拡がりとは、$x$ の観測結果のバラつきに対応していることがわかる。 (ここで注意しておきたいのは、観測により、電子には多大の影響が 与えられてしまうことである。 例えば、$x_2$ にいると観測された後の電子は、決して前の状態と同じ 状態では有りえない。 このことは偏光実験で、$y$ 偏光板で $y$ 偏光と確認された光子が、前の 状態と変わってしまっていることからも推察される。 同様にして、同じ状態の運動量を観測すると、その観測結果はバラつき、 $\left\langle\left.p_J\right\vert\psi\right\rangle $$p$ の拡がりに対応してくる。 つまり、おおよそ次の式が成立する。


\begin{displaymath}
(xの観測値のバラつき)\times(pの観測値のバラつき)>2\pi\hbar %e30
\end{displaymath} (6.27)

この関係を、ハイゼンベルグの不確定性原理(Heisenberg uncertainty principle)、あるいは単に 不確定性原理(uncertainty principle)と呼ぶ。 $x$ の観測値の確定するような状態にある電子は、運動量のバラつきが極めて 大きく、逆に $p$ の観測値の確定するような状態にある電子は、位置の バラつきが、極めて 大きいことを示している。 古典力学では、質点の位置と運動量は、つねに同時に与えられており、また 同時に観測も可能であるのに対し、大きな違いがある。




問題6..4 野球のボールが、$0.1$ nm (ほぼ原子間隔ぐらい) のバラつき内で観測される 状態にあるとして、運動量のバラつきは、ほぼどの程度となるか。 また、質量 $0.1$ kg、速さ$30$ m/sぐらいとしたときの運動量に対し、 このバラつきはどれほどとなるか。

答え $6.6\times10^{-24}$ kgm/s、 $2\times10^{-24}$ 倍でありこの バラつきは検出不可能である。




普通の大きさを持つ物体では、不確定原理はこのように重要な意味を 持たないが、原子分子の大きさになってくると、大きな意味を持ってくる。 例えば、原子の大きさは、不確定原理からきまってくるのである。 原子は原子核と電子から成り立っている。 例えば、水素原子の場合は、$+e$ の電荷を有する陽子を原子核とし、$-e$ の電荷を有する電子一個が、そのまわりを運動している。 原子核は重いので、ほぼ停まっているが、電子は、原子核の作るクーロン力に 引かれて、そのまわりを運動をする。 その静電ポテンシャルエネルギーは、電子の運動する領域の半径を $a$ 程度とするとき、 $-e^2/4\pi\varepsilon_0a$ 程度となる。 この値は、$a$ が小さい程小さくなるので、半径が小さい程安定であるように 見える。 一方、原子のエネルギーには、電子の運動エネルギー $mv^2/2=p^2/2m$ も 関与してくるため、$p$ も小さい程安定となる。 しかし、量子力学の世界では不確定性原理が成立し、$a$ を小さくすると $p$ は小さくできず、$a$$p$ は競合関係になってしまう。 従って、 $ap\cong2\pi\hbar$ の条件で、運動エネルギーと位置の エネルギーの和が、最少となる付近で、原子の大きさがほぼ決まることとなる。




問題6..5 水素原子の凡その半径を求めてみよ。

答え $a\cong4\pi\varepsilon_0/m(2\pi\hbar/e)^2=2$ nm。 $4\pi\varepsilon_0/m(\hbar/e)^2=0.053$ nmは、 ボーアの原子半径(Bohr atomic radius)と呼ばれ、原子半径の基準となっている。 なお、nmは $10^{-9}$ mのこと。 上述の考察は大変粗いもので、$2\pi$ とか $(2\pi)^2$ 程度のずれは 入り得る。 実際の水素原子の大きさは、ボーアの原子半径程度である。





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Yoichi OKABE 平成19年6月30日