光の検出器としては、フォトダイオードや光電管が用いられるが、 これらはいずれも、光電効果を利用したもので、光により、たたき出された 電子により流れる、電流を利用し、電気信号を得るものである。 この信号を増幅し、メータに表示することにより、光の強度に応じた出力を、 読むことができる。 光の強度が極めて弱いとき、メータの針は面白い動きをする。 図1.5に示すように、メータはパルス的に動く。 各パルスは大きさが等しく、パルスの数によって、光の数を 数えることができる。 パルスの発生は、完全に不規則(ランダム)である。 光の強度を少し強めると、単位時間あたりの平均パルス数が増加する。 さらに強度を強めると、パルスは重なり出し、メータは一定値に、 揺らぎののったような形となる。 この揺らぎは量子雑音と呼ばれ、強度の増加と共に少しずつ増えてはいくが、 メータの振れの平均値に比べると、相対的に減少していく。 従って、強い光に対し増幅度を落として、メータの振れを観測すると、強度に 比例したほぼ一定値を示すようになる。
光電効果を利用していない写真を検出器として利用したらどうだろうか。
写真を弱い光でとると、薄く感光し、強い光では濃く感光するので、写真は光の
強度に対し、連続的な検出器となっていそうである。
ところが、現像した写真を、顕微鏡で詳しく調べてみると、全体が薄く
感光しているのでなく、図1.6のように、
感光したとみられる銀の微結晶が、ぽつぽつと、まばらに
分布していることがわかる。
光の強度を上げると、感光により発生する、銀の微結晶の大きさは変わらずに、
単位面積当たりの個数のみが増加し、それにより写真が黒ずんでくる。
つまり、この場合にも、光の強度を、銀の微結晶の個数で、
数えることができる。
さてこれらの光検出器を用いて、光の干渉実験をしてみよう。 図1.7 のように、一つの光源から出た光を、遮蔽板の上に 開けられた、二つの小さな窓を通し、その後に置かれた、スクリーンに 投影するような装置を考える。 投影された光の強度は、スクリーンに沿って、光検出器を動かして、測定する。
光源の強度の強いときには、スクリーン上の像は、肉眼でも、 見ることができる。 まず、窓 2 を遮断し、窓 1 だけを開けてみると、スクリーンは、(a) に 示すように、かなり一様な明るさで、照射される。 窓 2 だけでも、同様である。 ところが、窓 1、2 を共に開けておくと、スクリーンには、(c) に示すような、 いわゆる、干渉パターンと呼ばれる、明暗の縞模様が現れる。 光検出器により、その出力の位置による変化を、正確に記録しても、(a)、 (b)、(c) のような、パターンが測定される。 (c) の最大強度は、(a)、(b) の強度の、約 4 倍となっている。 これらの結果は、光を波動と考えることにより、完全に理解される。 強度の強くなる点では、窓 1 からきた波と、窓 2 からきた波が、同じ 位相をとり、強め合うため、振幅がほぼ 2 倍となる。 従って、強度は約 4 倍となる。 一方、強度の弱くなる点では、位相が逆となり、二つの波が消し合うため、 強度はほぼ 0 となる。
光源の強度を、極めて弱くして、光検出器の出力が、 図1.5のように、かなり間隔の開いたパルスに、 なるようにし、実験空間内に、光子が一個しかないようにする。 このときには、光子は、窓1を通るか、窓 2 を通るかの、いずれかであろう。 窓 1 のみを開けて、長時間、光子を計数し、計数率を測定すると、 図1.7(a) のような、到達確率の分布が、得られる。 また窓 2 のみでは、(b) の 分布が得られるから、両方の窓を開けた状態での、到達確率の分布は、(a) の 分布と (b) の分布の和、つまり、それぞれの、約2倍程度の、ゆるやかな 分布をとり、干渉パターンは、現れなくなることが期待される。 ところが、実験結果は、どんなに弱い光に対しても、計数率に、(c) のような 干渉パターンが現れる。 すると、一つの光子は、半分ずつに分かれて、両方の窓を同時に通過し、 干渉するのであろうか。 答えは否である。 というのは、光検出器を、片方の窓の位置に於いてみると、相変わらず、同じ 大きさのパルスしか発生せず、半分の大きさのパルスは、決して、 見いだされないからである。
光子は、両方の窓を、同時に、通過できないにもかかわらず、両方の窓を、 通ったかのように干渉する。 この、一見矛盾する事実を、そのまま受け入れるという立場を取ったのが、 量子力学である。 つまり「光子は、常に、一つの粒子として検出されるが、その検出確率には、 波動としての干渉性がある」とするわけである。 何故、干渉するかという問については、答えを持たず、干渉するという 事実だけを取り入れる、という立場をとるわけである。
光子の運動には、もっと深淵な物理があって、光子は、それに従って運動し、 その結果、検出確率に、干渉性が現れるような、 振舞をしているのかもしれない。 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。 ただ、現在のところ、確率に干渉性があると考えるだけで、十分であり、それ 以上の、物理を要求するような、実験事実が、何一つ発見されていないという 点で、量子力学は現在、物理学の基礎、と考えられているわけである。