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: 自由粒子のシュレディンガー方程式の解 : シュレディンガー方程式 : 不確定性原理   目次   索引

自由粒子のシュレディンガー方程式

このような空間を、粒子はどのようにして運動するのだろうか。 量子力学における運動は、ここでも、各区間に粒子のいる確率振幅の変化という 形で、記述される。 そこで、いつものように、まず、粒子がある状態にだけいる、つまり、ある 区間にいて、他の区間への遷移が禁止されているときに、どれだけの エネルギーを持つかを考え、次に他の状態、つまり他の区間へ遷移する 確率振幅を考える。 空間を、一様とすれば、各区間にいるときのエネルギーは、区間によらず 一定である。 これを、$E_0$ で表そう。 また、他の区間への遷移は、簡単のために、すぐ隣の区間への遷移だけを考え、 それを $-A$ としよう。 負符号には、あまり深い意味はなく、ただ、後の 説明とのつながりのためにいれている。 また、$A$ も実数としておく。

この話は実は、前章の一次元格子の設定と全く同じである。 ただ、 格子間隔(lattice constant) $a$ が、ここでは、$\Delta x$ になっているだけである。 そこで、ここで取り扱っている空間の、端の処理も、前章と同じようにしよう。 つまり、空間の一番右端は、空間の一番左端にこっそりつながっているという、 周期型境界条件を採用しよう。 すると、前章の結果がすべて、利用できることとなる。

ここに、前章で示した運動方程式とその結果を、改めて示そう。 ただし、$a$ は、$\Delta x$ に書き替えてある。 まず、運動方程式は、次のようになる。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{d\left\langle\left.x_j\right\vert\psi(t)\right\...
...left\langle\left.x_{j+1}\right\vert\psi(t)\right\rangle
%e1
\end{displaymath} (6.28)

また、この運動方程式の固有解は、次式で与えられる。


\begin{displaymath}
\left\langle\left.x_j\right\vert p_J\right\rangle =\frac1{\sqrt n}\exp\frac{ip_Jx_j}\hbar
%e2
\end{displaymath} (6.29)


\begin{displaymath}
E_J=E_0-2A\cos\frac{p_J\Delta x}\hbar
%e3
\end{displaymath} (6.30)

また、式6.30の運動量とエネルギーの関係を、 図6.4に、図示する。 これらの結果を利用して、自由空間中の粒子の運動方程式を、推定してみよう。

図 6.4: 一次元格子の運動量とエネルギーの関係
\begin{figure}\centering
\begin{picture}(300,100)(0,0)
\put(0,0){\framebox (300,100){}}
\end{picture}
\end{figure}

作業を始める前に、古典的な自由粒子の、運動量とエネルギーの関係を、 求めておこう。 ポテンシャルエネルギーの変化しないときの、粒子のエネルギーは、運動 エネルギーだけで与えられるから、粒子の質量を $m$ として、 次のようになる。


\begin{displaymath}
E=\frac{p^2}{2m}
%e4
\end{displaymath} (6.31)

ここで、運動量 $p=mv$ の関係を利用した。 この関係を、図6.5に示す。 量子力学的な自由粒子(free particle)の場合も、その状態が 運動量確定状態であれば、そのエネルギーは、おそらく、同じ式で 与えられるであろう。 そこで、この二つの図6.46.5に 示した、運動量とエネルギーの関係を、 $\Delta x\rightarrow0$ の極限で、一致させることができれば、自由粒子に対する運動方程式を 求められそうである。

図 6.5: 自由粒子の運動量とエネルギーの関係
\begin{figure}\centering
\begin{picture}(300,100)(0,0)
\put(0,0){\framebox (300,100){}}
\end{picture}
\end{figure}

まず、次の条件により、図6.4の曲線が、原点を 通るようにする。


\begin{displaymath}
E_0=2A
%e5
\end{displaymath} (6.32)

次に、単純に、 $\Delta x\rightarrow0$ としてみよう。 運動量空間の間隔 $\Delta p$$2\pi \hbar/L$ で一定であるが、大きさ $L_p$ $2\pi\hbar/\Delta x$ であるので、だんだん大きくなっていく。 その結果、図6.4は、縦の大きさ $2A$ は一定のまま、 ひたすら横方向に引き伸ばされることになる。 これでは、とても、図6.5の関係と、一致させることは、 不可能であろう。 そこで、$2A$ も大きくしていくと、うまく重ねることが、 できるかもしれない。 次式を利用するが、$O(\theta^4)$$\theta^4$ 以上の高次の冪級数を 示している。


\begin{displaymath}
\cos(\theta)=1-\frac{\theta^2}2+O(\theta^4) %e6
\end{displaymath} (6.33)

6.30の運動量とエネルギーの関係は、次のようになる。


\begin{displaymath}
E_J=E_0-2A\cos\frac{p_J\Delta x}\hbar
=2A-2A\left(1-\frac{...
...right)=2A\frac{(p_J\Delta x)^2}{2\hbar^2}-2AO(\Delta x^4)
%e7
\end{displaymath} (6.34)

ここで、将来 $\Delta x$ を変化していくため、$O( )$ の内部は 簡略化して示した。 次式のように、$2A$$\Delta x$ の二乗に反比例させて、 大きくすることにする。


\begin{displaymath}
2A=\frac{\hbar^2}{m\Delta x^2}
%e8
\end{displaymath} (6.35)

上式はさらに、次式のように変形される。


\begin{displaymath}
E_J=\frac{p_J^2}{2m}-\frac{\hbar^2}{m\Delta x^2}O(\Delta x^4)
%e9
\end{displaymath} (6.36)

第二項は $O(\Delta x^2)$ であるから、 $\Delta x\rightarrow0$ に 対し、第二項は無視できるようになるため、上式は完全に 式6.31の自由粒子のエネルギーに一致することがわかる。 つまり、図6.4で、底の形をなるべく合わせるようにして、 運動量の範囲を、左右に限りなく拡げた極限を考えればよい。 こうすることにより、余弦関数の上に凸な部分は、左右に散っていってしまい、 中央の二乗的なところだけが、見えるようになり、図6.5 に一致するわけである。

運動量とエネルギーの関係が一致するような、$A$$E_0$ の選び方が、 見つかったので、次は、運動方程式が、 $\Delta x\rightarrow0$ で、 どのような形になるかを、検討しよう。 その前に、基底状態 $\left\vert x_j\right\rangle $を、連続的な基底状態に、変更しておこう。 このプロセスは、前節で詳しく述べたが、要するに、以下のように $\left\langle\left.\underline{x}\right\vert\psi\right\rangle $ のような確率密度振幅 (波動関数(wave function)ともいう) を定義し、その絶対値の二乗が、確率密度に 対応するように、工夫することである。


\begin{displaymath}
\left\vert\underline{x}\right\rangle =\frac{\left\vert x_j\right\rangle }{\sqrt{\Delta x}}
%e10
\end{displaymath} (6.37)

さて、運動方程式6.28$E_0$ および $A$ を、 式6.326.35を用い書き替え、さらに全体を $\sqrt{\Delta x}$ で割って、確率密度振幅にしよう。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{d\left\langle\left.\underline{x}\right\vert\psi...
...underline
{x+\Delta x}\right\vert\psi(t)\right\rangle )
%e11
\end{displaymath} (6.38)

ここで、 $x_j\rightarrow x$ $x_{j+1}\rightarrow x+\Delta x$ $x_{j-1}\rightarrow x-\Delta x$ と書き直している。 さらに、確率密度振幅 $\left\langle\left.\underline{x}\right\vert\psi(t)\right\rangle $ などを、$t$ にも依存し、$x$ にも依存することをはっきりさせるために、 $\psi(x,t)$ などのように、関数形で表現する。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{d\psi(x,t)}{dt}=-\frac{\hbar^2}{2m\Delta x^2}\l...
... \psi(x+\Delta x,t)+\psi(x-\Delta x,t)-2\psi(x,t)\right]
%e12
\end{displaymath} (6.39)

ただし、右辺の項の順番を意識的に変更してある。 ところで、 $\Delta x\rightarrow0$ とすると、この式の右辺の [ ] 内は、$\psi(x,t)$$x$ による二階微分になる。 ここで、次の関係を利用した。


\begin{displaymath}
\frac{d^2f(x)}{dx^2}=\lim_{\Delta x\rightarrow0}\frac1{\Del...
...}{\Delta x}
-\frac{f(x)-f(x-\Delta x)}{\Delta x}\right]
%e13
\end{displaymath} (6.40)

そこで、次式が得られる。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{\partial\psi(x、t)}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi(x、t)}{\partial x^2}
%e14
\end{displaymath} (6.41)

ここで、$t$ による微分と、$x$ による微分の、二種類の微分が 現れたため、$d$ の代わりに $\partial$ を用いた ($\partial$ は、 他の変数を固定して、ある変数だけで微分することを意味している)。 あるいは、もとの形で書くと、次のようになる。


\begin{displaymath}
i\hbar\frac{\partial\left\langle\left.\underline{x}\right\v...
...rline{x}\right\vert\psi(t)\right\rangle }{\partial x^2}
%e15
\end{displaymath} (6.42)

これが、自由粒子(free particle)のシュレディンガー方程式である。

ちなみに、この式の右辺の $\left\vert\psi(t)\right\rangle $ $\left\vert\underline
{x'}\right\rangle $ とおくと、連続系(continuous system)のハミルトニアンが得られる。


\begin{displaymath}
\widehat{H}_{xx'}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\left\...
...{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\delta(x-x')}{\partial x^2}
%e16
\end{displaymath} (6.43)


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日