このような空間を、粒子はどのようにして運動するのだろうか。
量子力学における運動は、ここでも、各区間に粒子のいる確率振幅の変化という
形で、記述される。
そこで、いつものように、まず、粒子がある状態にだけいる、つまり、ある
区間にいて、他の区間への遷移が禁止されているときに、どれだけの
エネルギーを持つかを考え、次に他の状態、つまり他の区間へ遷移する
確率振幅を考える。
空間を、一様とすれば、各区間にいるときのエネルギーは、区間によらず
一定である。
これを、
で表そう。
また、他の区間への遷移は、簡単のために、すぐ隣の区間への遷移だけを考え、
それを
としよう。
負符号には、あまり深い意味はなく、ただ、後の
説明とのつながりのためにいれている。
また、
も実数としておく。
この話は実は、前章の一次元格子の設定と全く同じである。
ただ、
格子間隔(lattice constant)
が、ここでは、
になっているだけである。
そこで、ここで取り扱っている空間の、端の処理も、前章と同じようにしよう。
つまり、空間の一番右端は、空間の一番左端にこっそりつながっているという、
周期型境界条件を採用しよう。
すると、前章の結果がすべて、利用できることとなる。
ここに、前章で示した運動方程式とその結果を、改めて示そう。
ただし、
は、
に書き替えてある。
まず、運動方程式は、次のようになる。
また、この運動方程式の固有解は、次式で与えられる。
また、式6.30の運動量とエネルギーの関係を、 図6.4に、図示する。 これらの結果を利用して、自由空間中の粒子の運動方程式を、推定してみよう。
作業を始める前に、古典的な自由粒子の、運動量とエネルギーの関係を、
求めておこう。
ポテンシャルエネルギーの変化しないときの、粒子のエネルギーは、運動
エネルギーだけで与えられるから、粒子の質量を
として、
次のようになる。
ここで、運動量
の関係を利用した。
この関係を、図6.5に示す。
量子力学的な自由粒子(free particle)の場合も、その状態が
運動量確定状態であれば、そのエネルギーは、おそらく、同じ式で
与えられるであろう。
そこで、この二つの図6.4と6.5に
示した、運動量とエネルギーの関係を、
の極限で、一致させることができれば、自由粒子に対する運動方程式を
求められそうである。
まず、次の条件により、図6.4の曲線が、原点を 通るようにする。
次に、単純に、
としてみよう。
運動量空間の間隔
は
で一定であるが、大きさ
は
であるので、だんだん大きくなっていく。
その結果、図6.4は、縦の大きさ
は一定のまま、
ひたすら横方向に引き伸ばされることになる。
これでは、とても、図6.5の関係と、一致させることは、
不可能であろう。
そこで、
も大きくしていくと、うまく重ねることが、
できるかもしれない。
次式を利用するが、
は
以上の高次の冪級数を
示している。
| (6.33) |
式6.30の運動量とエネルギーの関係は、次のようになる。
| (6.34) |
ここで、将来
を変化していくため、
の内部は
簡略化して示した。
次式のように、
を
の二乗に反比例させて、
大きくすることにする。
上式はさらに、次式のように変形される。
| (6.36) |
第二項は
であるから、
に
対し、第二項は無視できるようになるため、上式は完全に
式6.31の自由粒子のエネルギーに一致することがわかる。
つまり、図6.4で、底の形をなるべく合わせるようにして、
運動量の範囲を、左右に限りなく拡げた極限を考えればよい。
こうすることにより、余弦関数の上に凸な部分は、左右に散っていってしまい、
中央の二乗的なところだけが、見えるようになり、図6.5
に一致するわけである。
運動量とエネルギーの関係が一致するような、
や
の選び方が、
見つかったので、次は、運動方程式が、
で、
どのような形になるかを、検討しよう。
その前に、基底状態
を、連続的な基底状態に、変更しておこう。
このプロセスは、前節で詳しく述べたが、要するに、以下のように
のような確率密度振幅
(波動関数(wave function)ともいう) を定義し、その絶対値の二乗が、確率密度に
対応するように、工夫することである。
| (6.37) |
さて、運動方程式6.28の
および
を、
式6.32、6.35を用い書き替え、さらに全体を
で割って、確率密度振幅にしよう。
| (6.38) |
ここで、
、
、
と書き直している。
さらに、確率密度振幅
などを、
にも依存し、
にも依存することをはっきりさせるために、
などのように、関数形で表現する。
| (6.39) |
ただし、右辺の項の順番を意識的に変更してある。
ところで、
とすると、この式の右辺の [ ]
内は、
の
による二階微分になる。
ここで、次の関係を利用した。
| (6.40) |
そこで、次式が得られる。
ここで、
による微分と、
による微分の、二種類の微分が
現れたため、
の代わりに
を用いた (
は、
他の変数を固定して、ある変数だけで微分することを意味している)。
あるいは、もとの形で書くと、次のようになる。
これが、自由粒子(free particle)のシュレディンガー方程式である。
ちなみに、この式の右辺の
を
とおくと、連続系(continuous system)のハミルトニアンが得られる。
| (6.43) |