対称性の中には、鏡面対称や回転対称以外にもいくつかの対称性がある。
その一つが並進対称(translational symmetry)と呼ばれるものである。
例えば、第5章で示した周期型格子の上で電子状態をすべて
一格子左に動かすようなシフト操作を並進対称操作という。
格子上の運動方程式を満たす電子状態を一格子並進してみても、初期状態が
一つずれているだけで、当然、元の運動方程式を満たす。
つまり、格子上の電子の運動方程式は並進対称性を持っている。
この並進対称操作を
とすると、次の式で定義される。
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(7.17) |
変換時の位相は無視してある。
また、次の式の誘導のために、添字を
とした。
この式から一般に、
の任意の成分は以下のように書ける。
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(7.18) |
このように
と
が
だけ離れていても 1 となるような
周期性のある
を
と書いた。
念のために、
を
を基底とした行列で表現すると、
次のようになる。
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(7.19) |
対角と一つずれた位置、および左下に 1 が入っている。
さらに、周期型
関数を用いると
は次のように
表現できる。
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(7.20) |
との交換関係を調べておこう。
まず、上で導入した周期性のある
関数を用いると、
は次のように書ける。
| (7.21) |
これから、前式の
と同様に
が得られる。
これらを用いて、
が計算できる。
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(7.22) |
同様に、
が計算でき、両者は確かに一致する。
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(7.23) |
一格子並進操作を
回繰り返すと元に戻るので、
が
成立する。
したがって、
の固有値は
を整数として、
となる。
また、対応する固有状態を
とすると、固有値問題は次のように書かれる。
| (7.24) |
これより、次式が導かれる。
| (7.25) |
これより直ちに
の関係と
が得られる。
これらの関係から固有状態の成分が決定できる。
| (7.26) |
この固有状態は、第5章の式5.13に示した
の固有状態とまったく一致している。
さらに、第5章の式5.15で示した
運動量基底状態
ともまったく同じものであることがわかる。
ここで、並進対称操作の保存量と運動量が関連していそうであることに
気付くかも知れない。
以下に定義されるオペレータ
を考えよう。
| (7.27) |
ここで、
は、逆方向への並進操作に対応するオペレータである。
上式で得られたオペレータ
は
と同じ固有状態を持ち、
かつその固有値
は次式で与えられる。
| (7.28) |
念のために、
を行列表現しておこう。
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(7.29) |
この議論を連続化してみよう。
それには
または
なる操作を行えばよい。
まず、一格子並進操作
を
と書き
換えておこう。
そうすると、上の各式は次のように変形される。
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(7.30) |
| (7.31) |
この際、
の関係を用いた。
この後式の結果から、
を、特に運動量オペレータと呼ぶ。
再び格子システムに戻って議論を続けよう。
は固有状態が
であり、固有値が上に述べたような
値であることから以下のように表すこともできる。
| (7.32) |
そこで、同様な表現で、以下に示す位置オペレータ
を定義しよう。
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(7.33) |
この固有値も
で次式のようになる。
| (7.34) |
ここで、
なる関係を用い、また、
を
とした。
| (7.35) |
この式の右辺は
に対し、限りなく
関数になっていく。
さて、一般に次の式が成立する。
このことから、
では次式が成立する。
つまり
の標準偏差と
の標準偏差の積は
より
大きくなる。
これがハイゼンベルグの不確定性原理(Heisenberg uncertainty principle)の厳密な証明である。
なお、式7.36は、
として、
は常に非負となるが、この式を
の
二次式として、根と係数の関係を求めると上式の不等式が得られる。
等号が成り立つには
が成立する必要がある。
このことから、
を満す解を求めればよい。
ちなみに、連続系の場合には、
を解けばよい。
移項すると、
となるが、
や
が
定数であることに留意すると、この微分方程式は直ちに解けて、次の
ガウス誤差関数(Gauss error function)が得られる。
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(7.38) |
ただし、
を
とした。
存在確率の空間的分布は、この式を二乗すれば得られる。
これもガウス誤差関数(Gauss error function)であるが、標準偏差がちょうど
となっている。
つまり、こうなるように
を定めたのである。
であることを利用すると、確率の空間積分が 1 であることから、
となり、
が
得られる。
一般に波束(wave packet)というと、この形を指すことが多い。
ここで注意したいのは、この解はある時間でのワンショットであることである。
この解は複数のエネルギー状態の混ざったものであるので、時間と共に
変化していく。
この変化の様子は、これを運動量空間に直し、各運動量確定状態に時間変化項を
付けて再合成すれば得られる。
そこで、
を運動量空間へ変換しよう。
問題7..5
この式の誘導を試みてみよ。
ヒント
まず、
をまとめる。
次に
の引数に表われる
と
の項を
の形で表現し、残った定数をまとめよ。
の項は誤差関数の定積分で、定数になる。
式7.40の絶対値の二乗から運動量の標準偏差を求めると、
である。
空間方向の標準偏差
との積を求めると
となり、
最小値となっていることが確認できる。
この各運動量確定状態はエネルギー確定状態でもあるので、
なる因子を掛けて、合計すればよい。
これを再び位置空間へ変換すると、次のようになる。
なお、
を
としてある。
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|||
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|||
![]() |
(7.41) |
問題7..6
この式の誘導を試みてみよ。
ヒント
前問のヒントと同様の作業を
の替りに
に着目して行なえ。
さらに、定積分実行後、残った
の引数内の分母を実数化し、実部と
虚部に分類せよ。
結構、力のいる計算。
この絶対値の二乗より、確率の空間的な分布の変化が得られる。
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(7.42) |
この式もガウス誤差関数(Gauss error function)となっている。
では明かに最初の式7.39 と同じである。
時間が経過すると、平均が
、標準偏差が
で推移する。
つまり、中心は古典的な速度で移動し、標準偏差は最初のころは
であるが、時間が経つと、徐々にほぼ時間に比例して拡がっていく。
これが移動している粒子の古典的描像に対応する。
運動量の標準偏差は
と一定のままであるが、この
空間分布の標準偏差は
と時間につれ徐々に
拡がっていくので、これらの積も
とハイゼンベルグの不確定性原理の最小値から徐々に増えていくことになる。