以上述べた議論を、スピン 1/2 粒子に対して確かめてみよう。 第4章の式4.17を再掲しよう。
これを行列で表すと、以下のようになる。
これと、次の関係式を組み合わせてみる。
その結果は次のようになる。
| (8.26) |
この式に現れる行列は第4章の章末で述べたスピン行列の
成分になっている。同様にして、次の関係が得られる。
| (8.27) |
これらの式から、直ちに式8.3の三式が証明できる。また 次式も得られる。
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(8.28) |
さらに、次式も得られ、
はすべてのオペレータと交換することが
示される。
| (8.29) |
の固有解は固有値
に対して
と、
に対して
であるが、これらは当然
の (縮退した)
固有状態にもなっており、固有値は共に
となる。
したがって
である。したがって、
である。
という表現をすると、
は
であり、
は
に対応する。これらの式を前節最後の四式に代入すると、
すべて成立することが理解できよう。
次にスピン 1 の粒子の具体的な形を求めてみよう。スピン 1 の粒子はスピン 1/2 の粒子が二つ結合したもので考える。古典力学的に考えると、二つの スピンが同方向を向けば、スピン 1 の粒子として観測されそうであるし、 反対向きに結合すればスピン 0 の粒子として観測されそうである。この二つの 結合状態が区別できるような物理系を考えれば、スピン 1/2 粒子二個の 結合系として、スピン 0 やスピン 1 の粒子像を 理解することができそうである。例えば平行なときには二つの粒子の結合 エネルギーが高いが、反平行であると低いといったように異なる場合には、 二つの新しいスピン状態を区別することができる。
つまり、各スピンをベクトルで表したときに、その二つのベクトルの内積に
比例して全体のエネルギーが変わるようなシステムを解析すればよい。
そこでまず、スピン 1/2 粒子の各
成分を探してみよう。磁界を
方向に与えたときに、そちら方向にスピンが向いている
状態の
成分は、第4章のまとめから、
次のように書けるから、これらの成分をうまく組み合わせれば、ベクトルの
三成分が得られそうである。
| (8.30) |
やや天下りではあるが、第4章に出てきたスピンオペレータを 思い起こしてみよう。
| (8.31) |
これらは、ベクトルの三成分に何か関係がありそうである。例えば、
を
と
で挟んでみよう。
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(8.32) |
うまい具合にスピンベクトルを長さ 1 としたときの
成分となっている。
同様に、上記の各スピンオペレータの期待値を求めたものをまとめてみる。
| (8.33) |
これらはスピンベクトルの各
成分となっている。
そこで二つの粒子のスピン状態
、
の
平行度をスピンベクトルの内積、つまりそれぞれの成分の積和で表すと
次のようになる。ここで、1 番目の粒子のスピン状態
を簡単に
などと表記した。
| (8.34) |
あるいは、同じことであるが、複合粒子の状態を
などと表現し、1 番目の粒子にだけ影響するスピンオペレータを
と記載すると、以下のように書くこともできる。
| (8.35) |
以上のような準備に基づいて、次のようなハミルトニアンを持つ系を考えよう。
| (8.36) |
本当は、これにエネルギーの単位を持つ何らかの比例係数
が入り、
さらに結合の無いときのエネルギー
の傘上げがあるのであるが、
簡単化のために省略する。
各粒子が
と
を向いた、つごう四つの
の状態、
に対して、ハミルトニアンの成分を求めておこう。例えば
以下のように、全ての要素が計算できる。
| (8.37) |
結果を行列でまとめると、次のようになる。
この固有値問題を解いてみよう。このくらい簡単な行列だと、標準的な解法で 解くことができる。
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(8.39) |
これより、
が得られる。さらに、それぞれの
固有状態は次のようになる。
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(8.40) |
前の三つが三重根に対する固有状態であるが、縮退しているのでこれら三状態を 線形結合して得られる直行する別の三状態を持ってきても、全く問題が無い。 最後の状態だけが異なる低いエネルギーを持つ。実は、すぐ後でわかるように、 前の三状態がスピン 1 の複合粒子状態に対応し、最後の一状態がスピン 0 の 複合粒子状態に対応するのである。
これを確かめるために、全体に磁界をかけてみよう。簡単のために、二粒子は
、
の磁気モーメントを持つものとしよう。
磁気モーメントが全くないと、角運動量の有無を確認するために、他の
磁気モーメントを持つ粒子と衝突をさせ、その粒子の磁気量の変化を通じて
理解することになり、やや話が複雑になるからである。
磁界がかかっているときのスピン 1/2 の粒子の持つエネルギーは
第4章から分る。ただし、電荷が正を基準として符号を反転した。
このことから、全体のハミルトニアンは次のように書けることが推察できる。
| (8.41) |
磁界
が
方向を向いているものとして、まず、後二項の
ハミルトニアンの成分を考えてみよう。すると後二項は
となるので、例えば、次のような
計算が実行できる。
| (8.42) |
つまり、同じ状態に
をかけたものになる。他の
複合状態についても、同様に同じ状態に係数をかけたものが得られ、
については
、
については
、
については
が係数となる。したがって、行列形式で表すと、
対角行列となる。
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(8.43) |
以上のことから、三項とも含めた全ハミルトニアンを行列表示すると、 以下のようになる。
![]() |
(8.44) |
この
に関る部分は、当然であるが、式8.38に示した
ハミルトニアン行列と同じ形をしている。
このハミルトニアンの固有値問題を解いてみよう。固有値は
、
、
、
の四つである。また、それぞれの固有状態は次のようになる。
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(8.45) |
このうち、第 2、第 3 番目の固有状態は、厳密には
のときのものである。
が与えられると、少しずつずれていくが、余り
議論の本質に関わらないので、その効果は無視する。
すべての定数が正としてみよう。すると、前の三つが、ほぼ
の
エネルギーをとり、後の一つが、ほぼ
のエネルギーをとる。この
エネルギーの差は、二つのスピンの結合の差からくることは明らかであり、
前三つがスピン平行 (エネルギーが高い)、後一つがスピン反平行
(エネルギーが低い) に対応する。つまり、前者が
状態、後者が
状態である。
を与えると、エネルギーが少しずつずれてきて、エネルギーの乖離が
起る。高い方のエネルギーは三つに乖離する。もっとも高いエネルギーをとる
状態は、合成スピンが磁界と反対向き、つまり下向きであろう。つまり
は
、また、次の
は
、乖離状態の最低エネルギー
状態
は
に対応する。ここで、
などは
、
などを示す。
念のために、この四つの状態の角運動量の
成分を求めてみよう。
それは二つの粒子の角運動量成分の合計で与えらえるから、次のようにして
計算できる。
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(8.46) |
つまり、
を
を基底として表現すると次のようになる。
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(8.47) |
同様にして
、
、
の行列表現を求めると
以下のようになる。
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(8.48) |
![]() |
(8.49) |
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(8.50) |
最後の式は対角要素が
であることから、上三つの状態が
、
下一つが
であることを示し、これと
の対角要素から、
この結果からも、すでに述べた角運動量状態であることが理解できる。
問題8..4
、
の行列表現を誘導してみよ。
については、前二者の行列要素から計算せよ。
ヒント
例えば、