互いに区別できる粒子二個が共存する状態
を考えよう。
例えば陽子一個と、電子一個で成るシステムなどを考えよう。状態
として、粒子
が状態
にあって、粒子
が
状態
にある場合を考えるのは、二つの粒子が明白に
区別できることから、極めて容易である。この状態
を
次のように書こう。
| (9.1) |
右辺の第一項のケットに粒子
の状態を、第二項に粒子
の状態を
書いている。
二粒子状態
が、別の二粒子状態
をとる確率振幅は
と、それぞれの粒子の確率振幅の積で与えられる。これは二事象の同時に起きる 確率が、各事象の起きる確率の積で与えられることに対応している。
つまり、最初のブラは最初のケットとのみ関係し、次のブラは次のケットとのみ 関係することがわかる。
異なる二粒子系の基底状態は、粒子
の基底状態
と、粒子
の基底状態
を用いて、
のように書ける。当然のことながら、次の
関係が成立する。
次に、同一の二粒子からなる系の状態を考えよう。例えば、
電子二個からなるような系である。この場合も異なる二粒子系の状態と
同様である、と言いたいところであるが、一つだけ問題がある。二粒子が
同一であることから、粒子
が状態
にあって、
粒子
が状態
にあっても、逆に、粒子
が
状態
にあって、粒子
が状態
にあっても、区別がつかないことである。つまり、「同一の二粒子が、
状態
と
にいる」という状態
は、これら二つの混合状態である可能性がある。
| (9.5) |
状態
と
が正規化されており、かつ
直交しているとしよう。状態
も長さ
であるから、
| (9.6) | |||
| (9.7) | |||
| (9.8) |
が成立する。
さらに、この交ざり具合には、7章で述べた粒子交換時の
パリティ保存の規則が成立する必要がある。ヘリウム原子核のようなボーズ
粒子は、パリティ 1 でなければならないし、電子のようなフェルミ粒子は、
パリティ
でなければならない。パリティ 1 とは二粒子を入れ
換えても、状態の符号反転しないことを意味し、パリティ
ということは、符号が反転することを意味する。
本節では、まず同一のボーズ粒子二個を考えよう。この場合、
符号反転しないから、
を粒子の入れ換え操作とするとき、ボーズ
粒子二個の作る任意の状態
に対し
| (9.9) |
が成立しなければならない。
などを考慮すると、
が導かれる。したがって正規化の
条件と組み合わせると、
が得られる。簡単のために、
位相項は無視した。
| (9.10) |
次に、同一の二ボーズ粒子からなる系の、多粒子系基底状態を考えよう。
一粒子の基底状態を
としよう。
従来のように、
としないで
としたのは、後から述べる
数表示と紛らわしくないようにしたものである。この基底状態は、同一の
粒子であるから、両粒子について共通である。基底状態は言うまでもなく
正規直交系を組むことから、上記の議論はそのまま適用でき、「同一の二ボーズ
粒子が、状態
と
にいる」という
多粒子系基底状態の一つ
は、
| (9.11) |
と表すことができる。この状態を、
に粒子が一個あり、
に粒子が一個あることから、
と表す。
第一項が状態
の粒子数、第二項が状態
の
粒子数、と以下
までの粒子数を示している。特に、差し
支えないときには、後ろの 0 ばかりの表示は示さないこともある。
このように、各状態の数を示す表現法を、数表示(number representation)と呼ぶ。つまり、
| (9.12) |
である。
もう少し複雑な数表示を検討してみよう。
は、
と
と
の各状態に、各々一個ずつの
粒子の存在する状態であるが、どの二つの粒子状態を差し替えても、
符号反転せず、同じ形を保つためには、次のように、粒子状態を入れ換えた
個の組み合わせの項すべてが現れる必要がある。
| (9.13) |
言うまでもなく、各項の最初のケットが第一粒子、第二のケットが第二粒子、
第三のケットが第三粒子に対応する。今後、特に混乱のないときには、粒子を
区別する指標は省略する。
を求めてみよう。この状態自身のブラ状態を、
左から掛けてみると、全部で36項の積が生じるが、各項で、同一粒子のブラ
状態とケット状態が等しいということが三粒子全部に対し成立しないと、その
項は直交性から 0 となる。したがって、6項しか生き残らない。各項は
正規性から 1 となるから、右辺は
となる。これが
であることから、
となる。一般に粒子数
個の場合、
となる。
ある粒子状態に、複数の粒子が入っている場合には、上に述べたことに若干の
補正が必要となる。例えば、
と、総粒子数は三個であるが、
状態に二個の粒子が入っている場合を考えよう。この場合も
形式的に、6項すべてを書いてみると、上式右辺の 4 をすべて 2 に置き
換えるだけでよいから、
| (9.14) |
が得られる。明らかに同じ形の項が二項ずつ現れている。この重複は、粒子数
2 の入れ換え、
だけあるので、純粋に独立な項は、一般に、
個となるが、ここではあえて上記の形のままにして
おこう。さて、
を求めてみよう。先と同様に、上記状態のブラを左から
掛けると、今度は同じ項が
倍あるので、
個の
が
発生する。このことから、
は
、一般には、
となる。
もっと沢山のボーズ粒子のある系について一般的に考えよう。各粒子の取り得る
基底状態
とし、それぞれの
状態に
個のボーズ粒子があるとしよう。上の
式からの類推で、数表示の状態は次のように表現できる。
![]() |
(9.15) |
ここで、
は、右の各ケットの中身の基底状態を、互いに
入れ換えることを示し、
により、あらゆる
入れ換えに対する合計を行うことを示している。ここで示した数表示の
をいろいろに変化させたものが、ボーズ粒子の
多粒子系基底状態である。
問題9..1
| (9.16) |
を証明せよ。