電子系のような同一のフェルミ粒子からなる系でも、ボーズ粒子系と同じような
定式化が可能である。唯一異なるのは、フェルミ粒子系の場合、粒子交換に
関するパリティが
であることである。パリティ
ということは
二つの粒子を入れ換えると、符号反転することを意味する。二つのフェルミ
粒子の片方が、状態
にあり、もう片方が、状態
にある場合の
二粒子状態
は、ボーズ粒子の場合のように、
| (9.17) |
と表現できる。ただし、
である。フェルミ粒子の場合、
を粒子の入れ換え操作とすると、
| (9.18) |
が成立しなければならない。
など
を考慮すると、
が導かれる。簡単のために普通、
とする。
| (9.19) |
あるいは、数表示すると、
| (9.20) |
である。
もう少し、複雑な場合として
なる多粒子状態を考えよう。
どの二つの粒子状態を差し替えても、同じ形で
符号反転だけをするようにするためには、次のように、粒子状態を入れ
換えた
個の組み合わせの項すべてが現れる必要がある。
| (9.21) |
ただし、ボーズ粒子と異なり、適宜、負符号が入る必要がある。最初の
項のいずれか二粒子の状態を入れ換えて作られる項には負符号を付してある。
その他の正符号を持つ項は、最初の項から二粒子交換を二回行わないと
作られない性質を持っている。一般に、二粒子交換を奇数回行うことを奇置換、
偶数回行うことを偶置換と呼び、最初の項から奇置換で生成される項には
負符号を、偶置換で生成される項には正符号を付ける。こうした符号の付け
方は、行列式の計算の際にも使われ、上式を行列式表示した Slater 行列式で
議論することも少なくない。正規化定数
は、ボーズ粒子と同様、
となる。
フェルミ粒子の場合、同じ状態に二つの粒子が入っている場合には、例えば、
| (9.22) |
のように、
となってしまう。つまり、電子は同じ状態に
二個以上入ることはできない。これは、パウリの排他原理(Pauli exclusion principle)と呼ばれ、
あらゆるフェルミ粒子に対し成立する規則である。
もっと沢山の粒子のあるシステムを考えよう。状態
に、それぞれ
個のフェルミ
粒子があるとしよう。この場合も、ボーズ粒子とほぼ同様な表現ができる。
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(9.23) |
ここで、各記号の意味は、ボーズ粒子の場合とほぼ同様である。つまり
は、右のケットの中身の各フェルミ粒子の状態を入れ換えることを
示す。また、
はあらゆる入れ換えを合計することを示す。
フェルミ粒子の固有な点は、まず、右のケットの前に、適宜、
負符号のつくことである。ケット内の任意に並んだ状態の序列は、先にも
述べたように、基本の序列に対し任意の二粒子を入れ換える作業を何回か繰り
返すことで、実行できるが、その置換数
が奇数回の場合は
負符号を付けるため、
を付けている。
また、
、
などは、原理的にはどんな数でもよいが、フェルミ
粒子の場合には、それらが
以上であると、右辺に必ず、同じ形の
符号反転した項が現れて、キャンセルするため、結果として
となる。
つまり、
、
などは、すべて
、
のいずれかとなる。
これはパウリの禁止律の一般的な表現である。なお、ボーズ粒子については、
パウリの禁止律のようなものはなく、一つの状態にいくつの粒子が
入ってもかまわない。また正規化定数についてであるが、
も
も
1 であるから項の総数は
となり、正規化定数はボーズ粒子の場合に
対し、きわめて簡単な
となっている。ここで示した
数表示の
をいろいろに変化させたものが、フェルミ
粒子の多粒子系基底状態である。
問題9..2
| (9.24) |