next up previous contents index
: ボーズ粒子系のハミルトニアン : 多粒子系 : フェルミ粒子   目次   索引

多粒子系のハミルトニアン

多粒子系の運動を議論するには、多粒子系の ハミルトニアンがわからないといけない。簡単なシステムを例に多粒子系の ハミルトニアンを求めてみよう。ここで議論の対象とするのは、格子点が 二個で、かつ粒子も二個しかない系である。粒子が一個の場合は、 基底状態として $\left\vert S_1\right\rangle $ $\left\vert S_2\right\rangle $ の二状態がある。$S_1$ とは粒子が第一番目の格子点にいる状態、$S_2$ とは第二番目の格子点にいる 状態である。 このシステムのハミルトニアン$\widehat{H}$ をこれら二状態を 基底にして展開した成分は、4章で議論したように、


\begin{displaymath}
\left(\matrix{E_0 & -A \cr -A & E_0}\right)
\end{displaymath} (9.25)

で与えられる。つまり


    $\displaystyle \widehat{H}\left\vert S_1\right\rangle =E_0\left\vert S_1\right\rangle -A\left\vert S_2\right\rangle \cr$ (9.26)

が成立する。

次に、同じハミルトニアンを持つ区別できる二粒子 $X$$Y$ が、 二格子点のシステムに存在する場合を考えてみよう。 この場合、考え得る 基底状態は $\left\vert S_1,S_1\right\rangle $ $\left\vert S_1,S_2\right\rangle $ $\left\vert S_2,S_1\right\rangle $ $\left\vert S_2,S_2\right\rangle $ の四つがある。これらを基底状態にしてハミルトニアンの 各成分を計算してみよう。ハミルトニアンには粒子 $X$$\widehat{H}_X$ と 粒子$Y$$\widehat{H}_Y$ があるが、エネルギーの加法性を考慮して、全体の ハミルトニアン$\widehat{H}$ $\widehat{H}_X+\widehat{H}_Y$ としてみよう。$\widehat{H}_X$ は粒子 $X$ にだけ関係し、粒子 $Y$ にはまったく 関係しないものとする。例えば


\begin{displaymath}
\widehat{H}_X\left\vert S_1,S_2\right\rangle =E_0\left\vert S_1,S_2\right\rangle -A\left\vert S_2,S_2\right\rangle
\end{displaymath} (9.27)

のように変形される。$\widehat{H}_Y$ は逆である。例えば


\begin{displaymath}
\widehat{H}_Y\left\vert S_1,S_2\right\rangle =-A\left\vert S_1,S_1\right\rangle +E_0\left\vert S_1,S_2\right\rangle
\end{displaymath} (9.28)

のように変形される。

さらに二粒子間に力が働いている場合、例えばクーロン相互作用などがあると、 これに $\widehat{V}_{XY}$ のようなポテンシャル項が加わる。こうした 相互作用のポテンシャルもハミルトニアンの中に含め、 $H=\widehat{H}_X+\widehat{H}_
Y+\widehat{V}_{XY}$ としよう。ここでは二粒子が隣の格子にいるときだけ $-B$ になるものとしよう。これはどういうことかというと $\left\langle S_1,S_2\right\vert\widehat{V}_{XY}\left\vert S_1,S_2\right\rangle _Y=-B$ のように左右に異なる粒子が同じ場所の 状態がきたときだけ意味がある。つまり $\widehat{V}_{XY}\left\vert S_1,S_2\right\rangle =-B
\left\vert S_1,S_2\right\rangle $ と置き換えてよいことを示している。ともに同じ 場所にいるときには 0 となる。

さてハミルトニアンの成分のうち代表的な項の計算をしてみよう。


\begin{displaymath}
(\widehat{H}_X+\widehat{H}_Y+\widehat{V}_{XY})\left\vert S_...
...t\vert S_1,S_1\right\rangle -A\left\vert S_1,S_2\right\rangle
\end{displaymath} (9.29)

であるから、


$\displaystyle \left\langle S_1,S_1\right\vert(\widehat{H}_X+\widehat{H}_Y+\wide...
...\widehat{H}_X+\widehat{H}_Y+\widehat{V}_{XY})\left\vert S_1,S_1\right\rangle =0$     (9.30)

が得られる。さらに


    $\displaystyle (\widehat{H}_X+\widehat{H}_Y+\widehat{V}_{XY})\left\vert S_1,S_2\...
...\rangle -A\left\vert S_1,S_1\right\rangle
-B\left\vert S_1,S_2\right\rangle \cr$ (9.31)

などから、次の行列が得られる。


\begin{displaymath}
\left(\matrix{
2E_0 & -A & -A & 0 \cr
-A & 2E_0-B & 0 & -A \cr
-A & 0 & 2E_0-B & -A \cr
0 & -A & -A & 2E_0 }\right)
\end{displaymath} (9.32)

元の一粒子ハミルトニアンは隣への移動の確率振幅はあるが、これらの結果を 見ると、一粒子だけが移動する遷移には値が存在するが、二粒子が同時に 移動するような遷移には値が存在していない。

この行列から、固有値問題を解いてみると、以下の解が得られる。


    $\displaystyle E=2E_0: \qquad \frac1{\sqrt2}\left(\matrix{1 \cr 0 \cr 0 \cr -1}\...
...E=2E_0-4Ab: \qquad \frac1{\sqrt2}\left(\matrix{0 \cr 1 \cr -1 \cr
0}\right),\cr$ (9.33)

粒子間の相互作用 $B$ が無いときには、エネルギー固有値は $2E_0-2A$$2E_0$ (二個)、$2E_0+2A$ の四つであるが、単一粒子がそれぞれ $E_0-A$$E_0+A$ の固有値を持つことを考えれば、よく理解できる答えである。


next up previous contents index
: ボーズ粒子系のハミルトニアン : 多粒子系 : フェルミ粒子   目次   索引
Yoichi OKABE 平成19年6月30日