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: 第1.章のまとめ : 干渉性と計数性 : 確率振幅と確率で波動性と計数性を共に説明する   目次   索引

アインシュタイン-ド・ブロイの関係

光と同様の干渉実験を、電子を用いて行ってみたらどうなるであろうか。 その答えは、図1.7と同様の干渉パターンが、 得られるのである。 このように電子も干渉性をもつが、ではどのくらいの間隔の干渉パターンが、 現れるのであろうか。 それには電子の波長、$\lambda$ を知ることが必要になる。 こうした場合に用いられるのが、アインシュタインの関係(Einstein relation)ド・ブロイの関係(DeBroglie relation)である。


$\displaystyle E$ $\textstyle =\hbar\omega$ $\displaystyle \qquad\left(\mbox{アインシュタインの関係}\right)$ (1.6)
$\displaystyle %e5
p$ $\textstyle =\hbar k$ $\displaystyle \qquad\left(\mbox{ド・ブロイの関係}\right)
%e6
$ (1.7)

1.7は、アインシュタインが、光電効果を説明する際、 光の周波数 $f$ と、その光の与えるエネルギー $E$ との間に 成立するとした関係 $E=hf$ を書き直したもので、$\omega $$f$$2\pi$ 倍の角周波数である。 $\hbar $ は従って、$h/2\pi$ なので次のようになる。


\begin{displaymath}
\hbar=1.0546\times10^{-34}\mbox{Js} %e7
\end{displaymath} (1.8)

一方、式1.7は、ド・ブロイが、電子の干渉性から、その 波長 $\lambda$ と、電子の持つ運動量 $p$ の間に成立するとした 関係、$p=h/\lambda$ を書き直したもので、$k$ は単位長当たりの 波数の $2\pi$ 倍である。




問題1..7 $100$ V で加速された電子の波長を、求めよ。

ヒント $V$ の電圧で加速された電子の運動エネルギーは、$eV$ となる。一方、 電子の運動エネルギーは、$p^2/2m$ で得られるから、$p$ が求まる。 $e=1.6\times 10^{-19}$ C、 $m=9.1\times 10^{-31}$ kg、 $h=6.6\times10^{-34}$ Js。

答え $0.12$ nm。きれいな干渉パターンを得るには、電子の波長をある 程度揃える必要が有り、そのためには、どうしても $100$ V 程度の加速を 必要とする。 従って、電子線の波長は、普通 $0.1$ nm より短いものしか、得られない。


問題1..8 $L=1$ m、$d=0.1$ mm の干渉装置を用い、波長 $0.1$ nm の電子線の 干渉実験を行ったとき、干渉縞の間隔はいくらか。 また $d$ として、結晶格子間隔ぐらいの $0.5$ nm を用いると、干渉縞の 間隔はどうなるか。

答え $500$ nm、$100$ mm


問題1..9 重さ $0.1$ kg のボールを $30$ m/s で投げ、壁に $2d=10$ cm の間隔で 開けられた、二つの穴を利用して、干渉実験を行った (これ以上、穴の 間隔をつめると、穴と穴が、つながってしまう)。 干渉縞の間隔は、どの位になるか。

答え $2\times10^{-33}$ m 位で、グローブの大きさでは、とても、干渉 パターンはわからない。




これらの問題の答えからわかるように、電子の干渉縞の観察は、可視光で用いる 干渉装置では困難であるが、原子間隔ぐらいの窓間隔をとると、 十分観測できることがわかる。 現に、結晶に電子線を当てると、きれいな干渉パターンが見られる。 しかし、電子のように軽いものでも、窓の間隔を原子間隔ぐらいにしないと、 干渉パターンが細か過ぎて、観察しずらいことを認識して欲しい。

ボールの実験では、日常の経験から、ボールは、いつもどちらか片方の穴を 通っていて、光の干渉実験で述べたような、どちらの穴を通っているのか良く 分からない、などといった事態は発生しない、という反論がある。 しかしこれは、光を当てて見ているから、わかるのである。 光を当てて、どちらの穴を抜けたかを明確にしてしまうと、干渉パターンは 消失し、図1.7の、 $P(S\rightarrow1\rightarrow z)+
P(S\rightarrow2\rightarrow z)$ の確率が得られる。 もし、光を消し、どんなにしても、どちらの穴を抜けたのか、 知ることのできないような条件で、実験を行えば、極めて細かい干渉 パターンが、発生するはずである。 しかし、現実には余り細かすぎて、光のある場合との差は、弁別することが、 できないであろう。

このように、量子力学の効果は、光とか電子と言った原子サイズでは、顕著に 現れるが、ボールとか、象とか言った、身近なものに対しては、その効果を 調べることは、不可能である。

ド・ブロイの関係が、波長を通して、空間的な干渉性に、深く係わったのに 対し、アインシュタインの関係は、周波数を通して、時間的干渉性に、 深くかかわってくる。 角波数 $k$ の状態の光や電子が、平面波として伝わって行くとき、その 進行方向に、$x$ だけ移動した位置で検出される確率振幅は、 $\exp(ikx)$ の形で、与えられる。 したがって、波数の異なる波が、いくつか共存すると、空間的な干渉パターンが 発生し、検出確率は空間的に変動する。 一方、周波数の異なる波がいくつか共存して、時間方向の干渉パターンが 発生すると、同じ位置での粒子の検出確率が、時間と共に変動することとなる。 従って、粒子の移動のような運動現象は、すべて、時間方向の干渉性と、 深くかかわっていることが、推察される。


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日