光と同様の干渉実験を、電子を用いて行ってみたらどうなるであろうか。
その答えは、図1.7と同様の干渉パターンが、
得られるのである。
このように電子も干渉性をもつが、ではどのくらいの間隔の干渉パターンが、
現れるのであろうか。
それには電子の波長、
を知ることが必要になる。
こうした場合に用いられるのが、アインシュタインの関係(Einstein relation)と
ド・ブロイの関係(DeBroglie relation)である。
式1.7は、アインシュタインが、光電効果を説明する際、
光の周波数
と、その光の与えるエネルギー
との間に
成立するとした関係
を書き直したもので、
は
の
倍の角周波数である。
は従って、
なので次のようになる。
| (1.8) |
一方、式1.7は、ド・ブロイが、電子の干渉性から、その
波長
と、電子の持つ運動量
の間に成立するとした
関係、
を書き直したもので、
は単位長当たりの
波数の
倍である。
問題1..7
V で加速された電子の波長を、求めよ。
ヒント
の電圧で加速された電子の運動エネルギーは、
となる。一方、
電子の運動エネルギーは、
で得られるから、
が求まる。
C、
kg、
Js。
答え
約
nm。きれいな干渉パターンを得るには、電子の波長をある
程度揃える必要が有り、そのためには、どうしても
V 程度の加速を
必要とする。
従って、電子線の波長は、普通
nm より短いものしか、得られない。
問題1..8
m、
mm の干渉装置を用い、波長
nm の電子線の
干渉実験を行ったとき、干渉縞の間隔はいくらか。
また
として、結晶格子間隔ぐらいの
nm を用いると、干渉縞の
間隔はどうなるか。
答え
nm、
mm
問題1..9 重さ
kg のボールを
m/s で投げ、壁に
cm の間隔で
開けられた、二つの穴を利用して、干渉実験を行った (これ以上、穴の
間隔をつめると、穴と穴が、つながってしまう)。
干渉縞の間隔は、どの位になるか。
答え
約
m 位で、グローブの大きさでは、とても、干渉
パターンはわからない。
これらの問題の答えからわかるように、電子の干渉縞の観察は、可視光で用いる 干渉装置では困難であるが、原子間隔ぐらいの窓間隔をとると、 十分観測できることがわかる。 現に、結晶に電子線を当てると、きれいな干渉パターンが見られる。 しかし、電子のように軽いものでも、窓の間隔を原子間隔ぐらいにしないと、 干渉パターンが細か過ぎて、観察しずらいことを認識して欲しい。
ボールの実験では、日常の経験から、ボールは、いつもどちらか片方の穴を
通っていて、光の干渉実験で述べたような、どちらの穴を通っているのか良く
分からない、などといった事態は発生しない、という反論がある。
しかしこれは、光を当てて見ているから、わかるのである。
光を当てて、どちらの穴を抜けたかを明確にしてしまうと、干渉パターンは
消失し、図1.7の、
の確率が得られる。
もし、光を消し、どんなにしても、どちらの穴を抜けたのか、
知ることのできないような条件で、実験を行えば、極めて細かい干渉
パターンが、発生するはずである。
しかし、現実には余り細かすぎて、光のある場合との差は、弁別することが、
できないであろう。
このように、量子力学の効果は、光とか電子と言った原子サイズでは、顕著に 現れるが、ボールとか、象とか言った、身近なものに対しては、その効果を 調べることは、不可能である。
ド・ブロイの関係が、波長を通して、空間的な干渉性に、深く係わったのに
対し、アインシュタインの関係は、周波数を通して、時間的干渉性に、
深くかかわってくる。
角波数
の状態の光や電子が、平面波として伝わって行くとき、その
進行方向に、
だけ移動した位置で検出される確率振幅は、
の形で、与えられる。
したがって、波数の異なる波が、いくつか共存すると、空間的な干渉パターンが
発生し、検出確率は空間的に変動する。
一方、周波数の異なる波がいくつか共存して、時間方向の干渉パターンが
発生すると、同じ位置での粒子の検出確率が、時間と共に変動することとなる。
従って、粒子の移動のような運動現象は、すべて、時間方向の干渉性と、
深くかかわっていることが、推察される。