量子力学の世界では、ある一つの状態(state)が、いろいろな状態として、 観測される。 古典力学でも、ある一つの状態が、時間と共にいろいろな状態に変化していく。 しかし、古典力学では、時刻を固定すれば、いつも一つの状態しか 観測されない、と考えている。
ボールを投げてから
秒後のボールの位置は、初期状態 (初期条件) で
決まるある一点だけと考える。
だから、ボールの軌跡を
といった形で表現することができる。
ところが、量子力学ではそうはいかない。状態
の電子は、
秒後には状態
にもなり得るし、状態
にもなり得る。
どの状態と観測されるかは、実験をやり直すたびに、変わり得る。
そのため、「状態
をとる確率」といった概念が必要となってくる。
それどころか、状態
にある電子を、0 秒後、つまり同時刻に
観測しても、状態
をある確率でとったり、状態
を別の
確率でとったりする。
例えば、光の干渉実験では、「
を光源とする角波数
の光子の
状態」が、同時刻に「スクリーン上の
の位置にいる、光子の状態」
になり得ることができる。
この二つの状態は、明らかに異なるにもかかわらず、前章で求めた確率で、
前者は後者の状態をとり得るのである。
さらに、同時刻に別の「
の位置にいる光子の状態」も、前章で求めた
確率の
の代わりに、
を代入した確率で、とり得るわけである。
しかし,「スクリーン上の
の位置にいる、光子の状態」は、決して
別の「
の位置にいる光子の状態」にはなり得ない。
これらは、明らかに互いに異なる状態であるからである。
こうした状況を理解するためには、「状態」という概念を、正確に記述する 方法が必要となってくる。 本章では、基底状態(base states)という概念を導入し、この状態を基礎にして、 正確な議論をする方法について述べる。