まず、二つの音から和音 (chord) を作ろう。 これらの音の基本周波数の比が、整数であると、 両方の音の倍音はすべて、これら基本周波数の最大公約数の周波数の整数倍となる。 つまり、最大公約数を基本周波数とする別の音色 (tone) の音のように聞こえることになる。 しかし、実はこの合成音は最大公約数である基本周波数そのものは含んでいないため、 やや不自然な音になるが、濁った感じはない。
基本周波数の比が整数から少しずれてくると、 正しく合っているときの最大公約数に対応する周波数に、 差が生じてくると理解するのがよいであろう。 その差に相当する唸り (beat) が聞こえてくる。 さらにずれてくると、濁った音として聞こえてくる。 また、この周波数比が余りに複雑であると、 自然音とは著しく異なる音色を持つことになり、違和感を感じるようになる。 これをウルフ音 (wolf) と呼んだ。
このことから、快い和音を構成するのは、 二つの音の基音が簡単な比を持つ場合に限られる。 これを調和 (consonance) と言う。 調和したとき、始めて澄んだ音になるのである。 本章で述べる純正律音階 (just temperament scale) は、この調和を強く意識して作られている。
まず絶対調和 (absolute consonance) と呼ばれる音の組合せがある。 簡単に言えば、二つの音の基音がちょうど何オクターブかの関係にある組合せである。 セントで言うと、1200 cent の整数倍の組合せである。 なお、セントのように、比は対数の世界では差である。 対数の差を音程 (interval) と言う。
さて、もっとも簡単な絶対調和の整数比は 1:1 である。 0 cent 音程の組合せである。 二つの音の音色は異なってもよい。 この場合、基音の周波数も倍音の周波数もすべて一致するので、 あたかも第三の音色の一つの音に聞こえるのはずである。 この 1倍、つまり同じ基音を持つ音の音程は完1 (perfect first) と呼ばれる。 完1 の 1 はドレミの一番目の意味である。
次に簡単な調和する二つの音の整数比は 1:2 である。 1200 cent 差の組合せである。 この場合、二つ目の音の基音や倍音はすべて一つ目の音の 2、4、... 倍音に重なるので、あたかも音色の異なる一つの音に聞こえるのである。 これは先にも述べたように、一オクターブ (octave) の音程差となる。 この 2倍の音程は完8 (perfect octave) と呼ばれる。 8 はドを一番として音階 8番目のドとの和音であることを示す。
完1 と完8 は、一オクターブ異なる参照音に対する音である。 このように参照音がオクターブ異なる音程差を互いに転回音程 (inversion interval) にあると言う。 転回音程にある二つの音の相対比の積は 2 となる。