初級や中級の斜面によくある比較的平らで一定斜度の斜面を フラットバーン(flat bahn)という。 また、斜面に沿った斜度のもっともきつい方向を、フォールライン(fall line)、 あるいは最大傾斜方向と言う。 こぶ斜面のように斜面が凸凹している場合には、細かい凸凹を無視した大きな 視野から見た下向の方向を指す。
さて、フラットバーンでフォールラインの方向に 真っ直ぐ直滑降(schuss)することを考えよう。 このとき板や人間にかかる力を静止座標系で見ると 図3.1のようになる。 まず、人間と板とを一体して考えよう。 人間の重心には重力が働く。 また、摩擦がほとんどないので、雪の抗力は、雪面に垂直になる。 重心に働く力はこれですべてである。 重力は重心を通るから、トルクを発生しない。 残る雪の抗力がトルクを発生しないためには、 抗力が重心を通る直線上になければならない。 つまり、重心から雪面に下した垂線の足に抗力の作用点があればよい。 この垂線が荷重線となることは明かであろう。
足を荷重線の線上に置くかどうかは、人間次第である。 前によったり、後ろに寄ったりしうる。 板が人間を押す力も、またその反作用である人間が板を押す力も、 この荷重軸上に載っているから、足が前過ぎても、後過ぎても、 つらくなることは、前章と同じである。 前者は後傾姿勢(backward leaning position)であり、後者は前傾姿勢(forward leaning position)である。 望ましいのは足裏の中心、できたら拇指球の辺りで踏むことである。 ボードの場合には、力の軸は、両足の中心を通るのが望ましい。
ここで再び、荷重軸は重心を通る雪面に垂直な線になり、 鉛直にはならないことを十分理解して欲しい。 このことはボードでもまったく変らない。 ボードの場合にも、荷重軸は重心を通り、雪面に垂直となるので、 両足を、ほぼその両側に対称な位置に置くのがよい。
これで人間と板全体にはトルクは働かなくなったが、力の総和は 0 とはなっていない。 力の総和を見るには、すべての力を重心のところへ持ってくるのがよい。 図には、板の底に働いている雪の抗力と、 それを重心の位置までずらしたものとの両方が描いてある。 元の力の作用点は言うまでもなく、板の底であるが、 総和を見るときだけ、力のベクトルを重心のところまで移動するのである。 この総和はどう工夫しても 0 にはならない。
重力ベクトルを板垂直成分と板平行成分に分解してみる。 板垂直成分と雪の抗力の大きさを等しくすることにより、 重心が雪と平行に移動するようにすることができる。 しかし、板平行成分はどうやっても 0 にはできない。 これが 0 でないということは、 重心は雪面に平行、つまりフォールライン方向に加速されるということになる。
重心を最大傾斜方向に引っ張る力は、重力の最大傾斜方向成分だけであるので、
斜面の角度を
とすると、
となる。
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(3.1) |
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(3.2) |
この節のポイントは、重心を足 (ボードの場合には両足の中心) から見て、 雪面あるいは板に垂直の位置に置のがよいということである。 初心者のうちは恐いから、足の鉛直方向真上の位置に持ってきたくなる。 しかし、そのような場合、重心を通る荷重線は足の後を通るようになり、 ちょうど図2.2の止っているときに踵荷重で 頑張っているのと同じような力関係となる。 いわゆる後傾姿勢であり、尻餅を着きやすくなる。 初心者が直滑降で簡単に尻餅をついてしまうのは、ここに原因がある。 スノーボードの場合には後足荷重となる。 スキーとは異なり、さすがに尻餅は着かないが、ボードの操作性が 極めて悪くなる。