なお、速度が上がってくると種々の摩擦力が働くようになり、 やがて滑走は終端速度(terminal velocity)と呼ばれる一定の速度となる。 この場合には図3.1に示した力の関係は変ってくる。 湿雪や緩斜面の場合には、雪面とスキーの間の摩擦が支配的になる。 この摩擦力は板を進行方向後向きに引っ張る。 これが徐々に体にかかる重力の最大傾斜方向成分と平衡するようになってきて、 最後に加速がなくなり、一定速度で移動するようになるのである。
この際、図3.2に示すように、 雪の垂直抗力と摩擦力の合力は重心を通る必要があるので、 結局、荷重線は雪面垂直からずれてくる。 摩擦力と重力の最大傾斜方向成分が等しいことに着目すると、 荷重線は丁度鉛直となることが導かれる。 つまり雪面抵抗が上がる程、荷重線が立ってきて、足裏を後へ移動していく、 つまり、後傾姿勢の形にしなければならなくなる。 荷重線が足裏を通るので、後傾姿勢のように見えて、意識は後傾ではない。
雪の滑りがよいときには、速度は空気抵抗によって抑えらえる。 空気抵抗は全身に働くが、その平均が重心の付近にくると仮定しよう。 そのとき、重力の進行方向成分と空気抵抗が平衡するところで、 加速がなくなり一定速度になる。 雪面抵抗が少いので、雪からの垂直力は重心を通る必要がある。 図3.3に見られるように、 荷重軸は雪面垂直となり、重心はその線上となり、 つまりは加速中と同じ姿勢でよくなる。 このように、直滑降の姿勢は、摩擦に働く場所によって、変化する。 これら二つの結果から想像できるように、摩擦の中心が上に行くほど、 前傾が要求される。 強い風が、前方より吹いてくるとき、多くの場合、 足元付近は弱いが上半身には強く当る場合がある。 このような場合には、摩擦力の中心は図3.3より高くなるので、 前傾が必要となる。