next up previous contents index
Next: 慣性力 Up: 直滑降 Previous: 直滑降   Contents   Index

直滑降

初級や中級の斜面によくある比較的平らで一定斜度の斜面を フラットバーン(flat bahn)という。 また、斜面に沿った斜度のもっともきつい方向を、フォールライン(fall line)、 あるいは最大傾斜方向と言う。 こぶ斜面のように斜面が凸凹している場合には、細かい凸凹を無視した大きな 視野から見た下向の方向を指す。

Figure 3.1: 直滑降での力
\includegraphics[scale=0.75]{fig/straight.descent.eps}

さて、フラットバーンでフォールラインの方向に 真っ直ぐ直滑降(schuss)することを考えよう。 このとき板や人間にかかる力を静止座標系で見ると 図 3.1のようになる。 まず、人間と板とを一体して考えよう。 人間の重心には重力が働く。 また、摩擦がほとんどないので、雪の抗力は、雪面に垂直になる。 重心に働く力はこれですべてである。 重力は重心を通るから、トルクを発生しない。 残る雪の抗力がトルクを発生しないためには、 抗力が重心を通る直線上になければならない。 つまり、重心から雪面に下した垂線の足に抗力の作用点があればよい。 この垂線が荷重線となることは明かであろう。

足を荷重線の線上に置くかどうかは、人間次第である。 前によったり、後ろに寄ったりしうる。 板が人間を押す力も、またその反作用である人間が板を押す力も、 この荷重軸上に載っているから、足が前過ぎても、後過ぎても、 つらくなることは、前章と同じである。 前者は後傾姿勢(backward leaning position)であり、後者は前傾姿勢(forward leaning position)である。 望ましいのは土踏まず(arch)の辺りで踏むことである。 ボードの場合には、力の軸は、両足の中心を通るのが望ましい。

ここで再び、荷重軸は重心を通る雪面に垂直な線になり、 鉛直にはならないことを十分理解して欲しい。 このことはボードでもまったく変らない。 ボードの場合にも、荷重軸は重心を通り、雪面に垂直となるので、 両足を、ほぼその両側に対称な位置に置くのがよい。

これで人間と板全体にはトルクは働かなくなったが、力の総和は 0 とはなっていない。 力の総和を見るには、すべての力を重心のところへ持ってくるのがよい。 図には、板の底に働いている雪の抗力と、 それを重心の位置までずらしたものとの両方が描いてある。 元の力の作用点は言うまでもなく、板の底であるが、 総和を見るときだけ、力のベクトルを重心のところまで移動するのである。 この総和はどう工夫しても 0 にはならない。

重力ベクトルを板垂直成分と板平行成分に分解してみる。 板垂直成分と雪の抗力の大きさを等しくすることにより、 重心が雪と平行に移動するようにすることができる。 しかし、板平行成分はどうやっても 0 にはできない。 これが 0 でないということは、 重心は雪面に平行、つまりフォールライン方向に加速されるということになる。

重心を最大傾斜方向に引っ張る力は、重力の最大傾斜方向成分だけであるので、 斜面の角度を $ \theta$ とすると、 $ mg\sin\theta$ となる。

$\displaystyle m\frac{d^2x}{dt^2}=mg\sin\theta$ (3.1)

上式より、斜面方向の加速度は $ g\sin\theta$ となり、 $ t=0$ で滑り出したとすると、斜面方向の移動量は次式で与えられる。

$\displaystyle x=\frac12g\sin\theta t^2$ (3.2)

当り前であるが、斜面が急なほど、加速は早くなる。

この節のポイントは、重心を足 (ボードの場合には両足の中心) から見て、 雪面あるいは板に垂直の位置に置のがよいということである。 初心者のうちは恐いから、足の鉛直方向真上の位置に持ってきたくなる。 しかし、そのような場合、重心を通る荷重線は足の後を通るようになり、 ちょうど図 2.2の止っているときにかかと荷重で 頑張っているのと同じような力関係となる。 いわゆる後傾姿勢であり、尻餅を着きやすくなる。 初心者が直滑降で簡単に尻餅をついてしまうのは、ここに原因がある。 スノーボードの場合には後足荷重となる。 スキーとは異なり、さすがに尻餅は着かないが、ボードの操作性が 極めて悪くなる。


next up previous contents index
Next: 慣性力 Up: 直滑降 Previous: 直滑降   Contents   Index
Yoichi OKABE 2010-03-06