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慣性力

これまでは外部から見たスキーにかかる力を 論じてきたが、スキーヤーと一緒に動く座標系 (座標軸の回転はないとする) の上で論じることもできる。詳細は省くが、動く座標系の原点の加速度を $ \bf a_0$、その座標系に乗った人が感じる質点の加速度を $ \bf a'$ とすると、ニュートンの第二法則だけが次のように 変更されることが導かれる。

$\displaystyle m\bf a'=\bf F+m\bf a_0$ (3.3)

スキーヤーの重心と一緒に動く座標軸で観測すると、$ \bf a'=0$ および $ \bf a_0=\bf a$ なので、次式が成立する。

$\displaystyle \bf F+\bf F_a=0$ (3.4)

ただし、$ \bf F_a$ は次式で与えられる。

$\displaystyle \bf F_a=-m\bf a$ (3.5)

この $ \bf F_a$慣性力(inertia force)と呼ぶ。 重心と一緒に移動する座標系では、 元の力と慣性力の総和が 0 になるのである。 外から見たら、力の総和が加速を作り出し、内から見たら、 慣性力も含めて力の総和が 0 になるのである。

慣性力は静止系で見ると仮想的な力であるが、 質点と一緒に動く系で観測すると実際に観測できる力となる。 質点の運動と一緒に動く系を慣性系(inertia system)と呼ぶ。 慣性系では質点は静止しており、加速度は観測されない。 その替りに慣性力が観測されることになるのである。 例えば、電車が動き出すときには加速度は前方であり、$ -m\bf a$は後方を向くため、 電車に載っている人は後向きの慣性力を感じ、何もしなければ後へ倒れてしまう。 同様に、電車が停車する際は$ -m\bf a$は後方を向き、前向きの慣性力が働き、 何もしなければ前へ倒れることになる。

図 3.1に示した直滑降の場合、 図中「加速」と描かれたベクトルを反転して慣性力とすると、 これと重力と雪の抗力の三力の合力は0となる。


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Yoichi OKABE 2010-03-06