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曲がりに伴なう加速度

まず、速さ(speed)速度(velocity)の違いを述べておこう。 速さとは文字通り単位時間当りの移動距離である。 速度というと、これに移動方向も含めた概念、 つまりベクトル(vector)である。 等速(constant speed)とは速さが一定なだけで、移動方向はどんどん 変わってもよいが、等速度というと、等速でかつ方向も一定なことをいう。 等速度運動の法則とは、力が無い場合に等速度運動をすることを示している。 等速直線運動(uniform motion)といってもよい。

ベクトル(vector)という言葉を用いたが、ベクトルとは大きさと方向の両方を 備えた概念である。 したがって、加速度の法則は力の働いた方向に速度が変化していくことを 示している。 通常の直線的加速は直感的で分かりやすいのであるが、 ややこしいのは等速円運動(uniform circular motion)のような場合である。

図 4.1: 等速円運動の軌跡と速度ベクトルの変化
\includegraphics[scale=0.75]{{fig/static.circular.eps}}

半時計回りに等速円運動している質点は一定の速さで円の上を回っているので、 加速度はないと思われがちである。 しかし、速度のベクトルは徐々により左を向くように変化していっている。 速度のベクトルを図4.1のように尻尾を揃えて描くと、その 先端はやはり半時計回りに回転している。 つまり、円運動で右端にいるころの速度ベクトルは徐々に左向きに 加速されていることになる。

力はこの左向きの加速度ベクトルの方向を向いているはずであるので、 円の中心方向を向いているはずである。 別の場所でも速度ベクトルの変化の方向、つまり加速度ベクトルを 調べてみるとやはり円の中心方向を向いているので、常に中心方向の力が 働いているはずである。 これを向心力(centripetal force)と言う。 質点を糸で引っ張っているときには、この糸の張力が向心力となる。 また、スキーでターン(turn) しているときには雪の抗力が 向心力の源泉となる。

向心力という言葉よりも、遠心力(centrifugal force)という言葉の方が親しみやすいかも 知れない。 スキーを例にして言うと、これまでは外部から見たスキーにかかる力を 論じてきたが、スキーヤーと一緒に動く座標系 (座標軸の回転はないとする) の上で論じることもできる。詳細は省くが、動く座標系の原点の加速度を $ {\bf a_0}$、その座標系に乗った人が感じる質点の加速度を $ {\bf a'}$ とすると、ニュートンの第二法則だけが次のように 変更されることが導かれる。

$\displaystyle m{\bf a'}={\bf F}+m{\bf a_0}$ (4.1)

スキーヤーの重心と一緒に動く座標軸で観測すると、 $ {\bf a'}=0$ および $ {\bf a_0}={\bf a}$ なので、次式が成立する。

$\displaystyle {\bf F}+{\bf F_a}=0$ (4.2)

ただし、$ {\bf F_a}$ は次式で与えられる。

$\displaystyle {\bf F_a}=-m{\bf a}$ (4.3)

この $ {\bf F_a}$慣性力(inertial force)と呼ぶ。 重心と一緒に移動する座標系では、 元の力と慣性力の総和が 0 になるのである。 外から見たら、力の総和が加速を作り出し、内から見たら、 慣性力も含めて力の総和が 0 になるのである。 円運動の場合の慣性力は向心力の逆向きで、外を向いており、 遠心力(centrifugal force)と呼ばれる。 移動物体の立場に立つと、糸からの張力と慣性力である遠心力の総和が 0 になるのである。 本書では、基本は外から見た立場で議論し、内からの立場の場合にはその旨を 記載する。


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日