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鋤き込み回旋

最近、面白い論文9.1を 知った。 板にサイドカーブがなくても、エッジングだけで回旋を 始めるというものである。 しかも、同氏の別の著書9.2によると、斜面上で、 エッジングをかけていても、スキーをいわゆる平踏み、つまり左右方向に 水平にしていれば回旋はせず、斜めにエッジングするとその方向に回旋を 始めるという実験結果も紹介されている。 サイドカーブのないスキーで滑ったことはまだないが、ここに記述されたことは 現場でよく経験する事実である。 これらの実験は大変本質的なものであり、その啓発性に対して敬意を表する 次第である。

さて、これを事実として受け入れると、これに対する説明が必要である。 同氏の論文では余り明確には説明されていないが、実験の撮影結果を詳細に 見ると、板の大部分がエッジの作った雪壁に接していないときにも、回旋は 起きているようである。 このことから、回旋の主要因は サイドエッジングによるものではないようである。 平踏みから斜め踏みにすると、低く沈んだサイドが大きな摩擦力を持つので、 これが板を回転させるトルクとなるという解釈も可能であるが、元々雪面の 抵抗は少いので、これも考えづらい。

私の解釈は次のようである。板のトップは雪に潜り込まないように、 いわゆるトップベンド(top bend)と呼ばれる曲面で立ち上げた形にしてある。 板が水平に置かれて滑っているときには、直滑降のときであろうと、 斜滑降のときであろうと、トップベンドに働く雪からの力、いわゆる前圧は、 トップベンド底面に垂直でなければならないので、上後方を向く。 つまり、トップを押し上げて潜らなくする力と、前進を阻む若干の 抵抗力となる。 しかし、板を斜めにすると、この力は相変わらずトップベンド底面に垂直に 働くから、板を鉛直軸に対し回転させる成分を持ってくる。 力は僅かであるが、重心に対し遠いところで働くため、結構なトルクとなる。 このトルクによる回旋は特に名前がないが、本書では鋤き込み回旋(praw spin)と 名付けよう。

実際、回旋を促すには、トップに力をかけるとよいことが経験的に 知られている。 トップベンド底面が受ける力の発生するトルクが原因であるとすると、こうした 動作により、トップが沈み、トップにかかる力が増大するため、さらに大きな 回旋トルクを得ることが可能となる。 なお、重心を移動すると、板全体の底面にかかる力も、斜めでかつ前後の バランスが崩れるため、回旋トルクを発生する要因になりうる。 しかし、計算してみると、これはトルクを発生しない。


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日