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ドリフト回旋

近年はほとんどカービングスキーやカービングに適したスノーボードとなり、 カービングターン全盛であるが、かってのノーマルスキー時代は ドリフトターンが主なターンの手法であった。 また、カービングスキーやボードでも、適宜ドリフトターンが使われる。 ドリフトターン(drift turn) とは、板を雪面を撫でるようにずらして回旋していく ターンである。ドリフトとは、漂うという意味である。

図 9.1: ドリフト回旋
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fig/spin.drift-spin.eps
\end{figure}

この回転は、前横滑りを考えてみるとよく理解できる。 横滑りの際、板のやや後に荷重をかけると、板は後の落ちる方へ回旋を始める。 雪面から板にかかる摩擦力はエッジで発生するため板長手方向に一様に 分布する。 これをまとめると板の中央に板短軸方向にかかっているのと等価になる。 一方、足からの力は板が等速に横滑りしているような状態では摩擦力と バランスするが、それが中央にかかっている場合には、板に対するトルクも 発生しない。 しかし、足からの力がやや後方になると、板に対する回転トルクが発生し、 図9.1 のように、板は後の方が大きく移動することになる。 これがドリフト回旋(drift spin)の主要因である。実際には、これが前に 滑りながら起るため、エッジのかかっているサイドへ回旋することとなる。

なお、体の進行方向が、板長手方向に向いているときには、エッジングによる トルクはほとんど発生しない。 このため板を進行方向に対し、ある程度の角度をつけて 置き直さなければならない。 低速滑降で、チェックの際にも、板が体の進行方向とほぼ平行な 向きにあるような場合には、このトルクが働かないため、抜重をし、板をやや 谷向きに置き直す必要がある。 また、最大傾斜を過ぎると、板と体の進行方向の角度がついてくると共に、板を 押す力も大きくなるため、思いもかけない程のドリフトが発生する。 回り出したら余り押し過ぎないことが、細いシュプールを維持するための コツである。

例えば、ノーマルスキーのプフルークボーゲンのように、回転外側のスキーが 進行方向斜めに置かれた状態での回旋を考えよう。 図9.1のように、右の膝を折ると言うか、右の腰を少し 下ろすような姿勢をとると、右スキーには軽い内エッジがかかると同時にやや 後傾ぎみの足からの左回りの回旋トルクが働く。 スキーはこの回旋トルクで回旋を始める。 この軽いエッジングはあとから述べる重心に働く向心力を生成する。 この際、左スキーはなるべくフラットに置いて、 邪魔にならないようにしておくのがコツである。

図 9.2: ドリフトターン
\begin{figure}\centering
fig/spin.drift-turn.eps
\end{figure}

エッジングの仕方と回旋トルクの大きさにより、種々の弧を描くことができる。 エッジングが弱いと横滑りの要素が大きくなり、板は大きくずれながら 回旋する。 エッジングが強すぎると、エッジの抵抗が大きすぎて、回旋すら始まらない。 やや弱めると、図9.2のように、テールはやや横滑るが トップは横滑りの少ない回旋が成立する。これが比較的安定で望ましい ドリフト回旋である。 うまく制御すると、トップは僅かに切れ上がる程度で、回旋することもできる。

こうしたドリフト回旋、つまりずれの回旋を用いたターンは、ドリフトターンと 呼ばれるが、後にも述べるようにプフルークターンやシュテムターンの際に 主に用いられる回旋である。 また、パラレルターンの後半、チェックの直前にも見受けられる。

ドリフトターンは簡単に回旋量が制御できるため、便利な回旋手法であるが、 スキーの後に体重をかけることから後傾気味となり、またテールが谷側へ 逃げていくことから内傾にもなることから、次の動作への体の動きが 消極的になるという欠点を有している。 ドリフト回旋は、やや古い回旋の仕方であり、現在はより積極的なカービング 回旋や体のねじりの開放を利用した回旋が中心となっているが、それについては 次節以後で述べる。 なお、ドリフト回旋の要因が強い場合、トップよりもテールのずれが 大きくなる。 一方、カービング回旋やねじり回旋の要因が強い場合には、トップはむしろ 切り上がり気味となり、全体のシュプールは細くなるので、これによって 判定することができる。


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Yoichi OKABE 平成19年6月30日