スキーが地についていても、ジャンプターンと同じような動作をすると、 スキーは結果的に弧を描いていく。 特にショートターンでは、ジャンプターン的なねじり回旋の要素が 大きくなってくる。 すべての速度が速くなり、かつ左右の移動も短時間で起こるため、上半身の持つ 慣性が支配的になり、スキーからの影響が相対的に少なく、重心は 比較的直線的に一定速度で移動するようになる。 するとスキーに複雑な力をかけなくても、スキーは体の 周りについてくるようになる。 つまりスキーヤーはスキーを雪に引っ掻けさえしなければどんな形にでも 動かせるようになるのである。
ジャンプターンで、ジャンプしてから次のジャンプ点までスキーを徐々に回旋し ながら跳んでいき、着地する。 この間のスキーの空中での形を描くと図9.4のように、 心なしかターンを描いているように見える。 これを、もっと円弧を意識して動かし、完全には 空中回転しないようにしていくと、徐々にスキーが常に雪面に接した ショートターンに移行していく。
スキーを回すことは、空中でも雪面に接していても、そんなに 難しいことではない。 というのは人間の上半身の持つ慣性モーメント (回旋に対する質量のような 概念で、これが大きいほど、同じトルクに対し回旋しにくくなる) は、スキーの 慣性モーメントに比べかなり大きいから、上半身とスキーの間に脚で捻れを 入れると、上半身はほぼ一定の方向を向いていても、スキーだけを大きく 回旋できる。 もっとも、スキーを強くエッジングしたりして回旋を 抑えているとこうはならない。 スキーを空中に上げるか、荷重を減らすと同時に平踏みして、自由にすると、 脚のねじりは直ちにスキーに伝わる。 これに、適度な脚の振りを入れると、スキーを円弧に沿って 動かすことができる。 むろん、実際のターンでは適切なエッジングを併用するが、本質的には ショートターンでは、この脚の捻りが支配的となって維持される。
もし、円弧を描いている最中に荷重をかけたらどうなるであろうか。 チェックの直後は抜重が十分であるので、スキーはほとんど 雪面をなぞっていくだけである。 スキーがフォールライン方向を向く辺りから、内エッジをかけ気味にして スキーのトップから着地していくと、鋤き込み回旋を進めるような力が働き 始め、一方、重心はスキーの中心付近を押していくのでトルクが発生し、 スキーは回旋を始める。 完全に着地をする頃にはほぼ次のチェック点に到着していることになる。 エッジは完全に内側にかける。 そこで、スキーを斜めにしたまま横下に荷重すると、この半回転で得た下向の 速度を吸収する上向きの撃力と、次のチェック点への横向きの撃力を同時に 受けることになる。 実際には、チェックの前に重心をやや山側に移動して、チェックのショックに 耐えるようにし、チェックの間にスキーの上を通り越して少し谷側へ 移動したところで抜重すると、もっと滑らかなターンとなる。
ターンのペースがやや遅く、着地がやや早い場合、例えばスキーが フォールラインを向いたときに内エッジで着地したとすると、スキーからは 上向きの力と横方向内向の力を受ける。 この力は弱いが、引き続くチェック時の横向きの力と同じ方向であるので、 チェックが手前に広がったものと理解できよう。
もっと、早く、フォールラインを向く前に着地した場合を考えよう。 このタイミングのスキーからはどう荷重しても上向きと横方向内向の力だけを 得ることはできない。 どうしても前向きの力も与えられてしまう。 つまり、重心は前方向に加速されてしまう。 この前向きの加速分はチェックの手前付近で十分減速されなくてはならない。
この回旋の特長は、必然的に後傾の必要がないことである。 また、スキーは弧の形とある程度独立に回旋をするので、トップは 場合によっては、弧を切り上がり気味に回っていく。 テールもほとんど弧に沿って動き、全体に細いシュプールとなる。 まず何よりもドリフトターンと異なり、テールを押し出していくという姿勢の 不安定性がないこと、後傾にならないため、チェック直後の最大傾斜面への 突入の際、遅れが生じないことなど、メリットが多い。
テールの押し出しを習得してしまうと、ねじり回旋の習得は 容易ではなくなるので、練習に当っては、テールの押し 出しをしなくてもかなりの小さな回転半径で回れるカービングスキーを 使うべきである。 最初は大きな回転弧からスタートし、体に蓄えらえれるねじりを意識して、 チェック後、それを積極的に戻すようにすると、結果的に小さな 回転弧となっていく。 さらに、ねじりを体全体に蓄えたり、腰に蓄えたり、場合によると膝下に 蓄えてみて、それぞれに開放を試みる。 すると速い回旋、小さな回旋といった種々のねじり回旋が 習得できるようになる。
ノーマルスキーでも同じように習得可能ではあるが、最初にずれのない大きな 回転弧から始める。 この際、回転弧は極めて大きくなるため、本州のゲレンデのように 混んだところは適切ではない。 土日を避けて練習するなど、まずはノーマルスキーでのカービングを十分学んだ 後に、カービングスキーと同じような方法で練習するのがよい。 私自身は最初は、北海道でノーマルスキーによるカービングを実行した。 そして、ねじりが意識できるころにカービングスキーに履き換えたところ、 余りに簡単にねじり回旋を習得することができたのである。 ということで、カービングスキーを薦める。